本記事では若手ゼネコン技術者向けに排水ポンプの種類について説明していきます。
排水ポンプとは
排水ポンプとは地下などの排水本管より高さの低い位置にある排水を排出するための機器です。
建築物の地下にはピットと呼ばれる配管が通るための空間があり、地下から湧き出る水(湧水)が出てきます。その湧水を排水するために排水ピットに排水ポンプを設置します。
汚水槽や雨水槽など、設置する場所によって排水ポンプの種類が変わっていきます。
排水ポンプの種類
排水ポンプには主に「ボルテックス型」と「セミボルテックス型」があります。
ポンプはポンプに内蔵されているはねで水を押し出すことによって水を持ち上げます。
そのはねに固形物などの異物が挟まるとポンプの故障につながります。
排水ポンプには水と固形物が混ざったものが排出されるため、異物が入っても問題ないようにはねの隙間(異物通過径)を大きく設けることで、固形物も一緒に排水することが可能になります。
そのため、固形物の大きさに合った排水ポンプを選定する必要があります。
その固形物の大きさによって「ボルテックス型」と「セミボルテックス型」のどちらを使用したほうがよいのかが変わっていきます。
ボルテックス型排水ポンプ
ボルテックス型排水ポンプとは口径の70パーセント以上が異物通過径として開口しているため、大きい汚物も引っかからずに排水することが可能なポンプになります。
使用用途としては主に以下のものになります。
・地下部分の汚水、汚水槽の排水
・し尿処理施設の排水の排水
セミボルテックス型排水ポンプ
セミボルテックス型排水ポンプとは口径の40~63パーセント程度が異物通過径として開口している排水ポンプです。
汚物の排水には適さないが、食材のカスや砂や細かな落ち葉などを水と一緒に排出することが可能です。
使用用途としては主に以下のものになります。
・地下部分の雑排水槽の排水
・雨水貯留槽の排水
・湧水槽の排水
排水ポンプの運転
排水ポンプの運転種類には以下のものがあります。
・自動型
・自動交互型
・自動同時型
非自動型
非自動型とはフロートスイッチ(浮き型のスイッチ)がついっていないタイプです。
手動で電源を入れることでポンプを運転させる方式です。
目視ができ、低頻度で排水が必要な個所に使用されます。
自動型
一つの排水ポンプにフロートスイッチ2つがついており、自動的に排水を行う方式です。
フロートスイッチは上部にコモン(起動)スイッチと下部に停止スイッチがついており、コモンスイッチのレベルまで水位が上がるとポンプが起動し、水位が停止スイッチまで下がることでポンプが停止します。
排水量が少ない排水槽に使用されます。
自動交互型
複数の排水ポンプにフロートスイッチ3つがついている方式です。
自動型運転を複数のポンプで連動して使用するときに行う運転方式です。
フロートスイッチの種類としては上から
・コモン(起動)スイッチ
・ポンプの切り替えスイッチ(2回上を向くことで切り替わります)
・停止スイッチ
排水ポンプを複数交互に使用することで機器の寿命を延ばす効果があります。
また、一つのポンプが故障した際にも一つで稼働できるのが利点になります。
自動同時型
自動交互運転のコモンスイッチの上に同時運転用のフロートスイッチを設けた方式です。
大雨などの際にポンプ一つの排水量では間に合わないときに2台で排水を行うことを目的にした運転方法になります。
主に排水量の急増が見込まれる雨水槽などに使用されることが多くあります。
排水ポンプの警報
排水ポンプは主に地下のピットや水中にある場合が多いため、日常的に目視できない場合が多い。
そのため、管理室などの警報盤にて異常時の警報を受けるように計画を行います。
・機器の故障警報
・水槽の満水警報
警報の名称付けは「ポンプの種類(湧水ポンプ、雨水ポンプ、汚水ポンプなど)」「ポンプNo(複数ある場合はNo1、No2など)」場所が分かるように設定しましょう。
計画時の注意
排水ポンプを設置する際に汚水などの流入量以外にも次のものが問題ないか確認しましょう。
・排水ポンプと床点検口の位置関係
・ポンプのメンテナンス方法
釜場の大きさ
排水ポンプは水中ポンプに分類されるためポンプの中に水が満たされていないと空気を噛んで空転してしまします。
そのため、水をためておける「釜場」と呼ばれるくぼみが必要になります。
ポンプの種類によってポンプと壁の離隔距離や運転に必要な水位があるため、ポンプの仕様書を確認し、必要な釜場サイズを依頼しましょう。
排水ポンプと床点検口の位置関係
地下ピットに入る際に床点検口を使用します。
メンテナンス性の観点から基本的に定期的なメンテナンスの必要な排水ポンプの直近に設けることを推奨されています。
ただし、排水ポンプ直上に点検口を設けると、降りてくる人間と排水ポンプが接触して故障の原因となる可能性が高いため、少しずらした位置に配置しましょう。
ポンプのメンテナンス方法
上述した通り、排水ポンプには半年に1回ほどメンテナンス点検を行うことがメーカーにて推奨されています。
汚物がたまっている汚水槽では、毎度汚水槽に入らなくてもよいように点検口から引き抜き可能な着脱式にしておくことでメンテナンス性の向上につながります。
コスト的にも高くなるため、施主に説明し必要性の確認を行いましょう。
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